年金保険料滞納で差し押さえを回避するために知って欲しいたった1つのこと

住民税や所得税の支払いが滞って家財が差し押さえられるということを知っている人は多いかもしれません。

一方で、年金の支払いを滞納することで、家財が差し押さえられるというのは意外に知らない人が多いのではないでしょうか。

ここでは、年金の支払いを滞納することでも生じる家財の差し押さえについて、その根拠や差し押さえまでのプロセス、対処法を紹介します。

実は恐ろしい年金の滞納について、ぜひここで知っておきましょう。

年金の支払いを滞納すると差し押さえされるのか?

年金の支払いを滞納すると差し押さえされるのか?
「将来的にもらえるかどうかも分からないのに支払うなんて無駄に感じてしまう」

ネガティブなイメージが強く、給料などから天引きされる形でなければ、ついつい支払いを滞納してしまいがちな年金ですが、それによって家財の差し押さえが行われると知れば、驚く人もいるのではないでしょうか。

中には、それでも年金の支払いで差し押さえのような強制徴収処分が下されるわけがないと考える人もいるかもしれません。

しかし、年金の支払いを滞納することによって差し押さえ処分の対象になることは、法律で決められているというのが現実です。

督促と滞納に関する処分は法律で決まっている

国民年金の支払いを滞納することによって発生する処分ついては、国民年金法の第96条にその詳細が定められています。

これによれば、年金保険料の支払いが滞納した場合、厚生労働大臣が期限を定めて督促でき、それでも徴収金の納付が認められない場合、国税滞納処分の例に従って、市町村に対して処分を請求できるとのこと。

そして、その処分は市町村税の例によって行うことができるとされており、その例というのはいわゆる差し押さえによる換価、充当であることが、地方税法や国税徴収法を見ると分かります。
(参考:地方税法 - houko.com国税徴収法 - eGov

督促後に差し押さえまでどのような経過で行われる?

年金を滞納した場合、差し押さえまで一体どのようなプロセスを踏むのか見ていきます。

なお、順序としては以下のようになります。

  1. 督促状、催告状、特別催告状が届く
  2. 所得調査
  3. 最終催告状が届く
  4. 納付督励、来所通知、督促状が届く
  5. 差し押さえの予告後
  6. 財産調査
  7. 差し押さえの実行

ここから、それぞれについて解説します。

督促状、催告状、特別催告状が届く

年金の支払いを滞納すると、まずは督促状あるいは催告状が送付されます。

滞納の基準は、納付期限までに指定された金額の納付がなかったことがあげられますが、督促に関しては、日本年金機構のプレスリリースを見ると。控除後所得額や未納月数に照らし合わせて送付されることが分かることでしょう。
(参考:「国民年金保険料強制徴収集中取組期間」の結果について - 日本年金機構

2017年に発表されたこのプレスリリースによれば、同年においては、控除後所得が300万円以上で未納月数が13月以上の人に対して、督促が行われたようです。

なお、控除後所得額が350万円以上の人においては、未納月数が7月以上で督促が行われることが読み取れます。

督促ですが、書面の送付によって行われるだけでなく、担当者による電話や戸別訪問などを通じた滞納分の催促も実施。

これらの督促に応じず、なおも保険料の未納状態が続いた場合、特別催告状が送付されます。

なお、最初の督促状や催告状、電話などによる催告について、法的拘束力はありません。

しかし、特別催告状に関しては、通知後に所得調査などが進められる可能性が高まるため、年金事務所や自治体の年金窓口に納付あるいは猶予や免除といった申請するなど、何らかの相談をしにいく必要があるといえるでしょう。

特別催告状は無視してはいけません。

所得調査

本人はもちろん、その配偶者など連帯納付義務のある人の所得に関する調査が行われます。

住民税などの滞納による差し押さえは一身専属であり、配偶者などにまで効果は及びませんが、年金の場合は配偶者の支払い能力まで見られることに注意してください。

最終催告状が届く

強制徴収の開始宣告ともいえる、最終催告状が送付されます。

この時点で、既に督促および差押対象者として確定されていることから、万が一この段階にまで至った場合、適切な対処をしなければあとは差し押さえまで一直線です。

そうはいっても実情としては、この時点に至っても突然督促状を送りつけてくるのではなく、戸別訪問や電話などを使って、納付の督励やそのときの状況確認、支払い意思の有無などが確認されることがほとんどですので、丁寧に対応や相談を行うのが肝要。

ただし、事ここに至ってなお誠意のある対応が示されない場合、次の段階に進むことになります。

納付督励、来所通知、督促状が届く

法律において、強制徴収をするためには、督促状を送付することで保険料の納付を促す必要があると定められているため、改めて督促状が送付されます。

あわせて、来所通知が行われるケースもあるでしょう。

督促状には、新たな期限が記され、その期限までに未納分の年金保険料を納めること、納めない場合に強制徴収が行われることが記されています。

また、この時点で延滞料が発生することにも注意が必要です。

つまり、支払い金額が滞納した金額よりも上乗せされたものになります。

差し押さえの予告と財産調査の開始

最終催告状で示された納期限までに保険料の納付がなかった場合、差押予告通知書が出されるとともに、財産調査がスタート。

未払いの保険料を補填するため、滞納した本人とその配偶者などについて、差し押さえられる財産などがないか調べ上げられます。

差し押さえの対象となる財産は、以下のものです。

  • 給与、預貯金
  • 事業者の場合売掛金などの債権
  • 生命保険
  • 自動車
  • その他、換価可能な不動産など

優先度は、現金として徴収できるものほど高く、競売によって換価する必要が生じるものほど優先順位が低くなります。

差し押さえの実行

差し押さえが実行されます。

不動産など、現金化する必要があるものは、公売という形で競売にかけられ、入札が行われることになるでしょう。

なお、強制徴収は自治体に委託される形で行われますが、場合によっては国税庁にその権限を委任して行われる場合もあります。

この段階に至ってしまうと、差し押さえの対象となったものを取り戻すのは極めて難しくなるでしょう。

差し押さえだけじゃない!年金未納のデメリット

差し押さえだけじゃない!年金未納のデメリット
年金保険料の滞納によって起こり得る最悪の事態として、差し押さえを紹介しましたが、年金保険料を納めないことによるデメリットは差し押さえだけではありません。

あくまで、最悪の事態が差し押さえというだけであり、未納によるデメリットは多岐に渡ります。

延滞金によって支払いが苦しくなる

前述したように、督促状に指定された期限内に納付を完了しなければ、延滞金が加算されることになります。

延滞金は、納付書に記載された納期限の翌日から起算して、徴収金完納日または財産差押日の前日までの期間における日数について、年14.6%の割合で計算した金額が課されることに。

ただし、納期限の翌日からおよそ3ヶ月間は年7.3%か各年の特例基準割合のどちらか低い方の割合が適用されるため、全額に対して14.6%が適用されるというわけではありません。

この延滞金ですが、一部納付が認められた場合は、その納付日以降の期間について再計算されるため、全額一度に支払えなくても、一部支払うことで延滞金をいくらか減らすことが可能になる点は覚えておきましょう。

いずれにしても、年金は1ヶ月につき数万円程度の支払いが必要となることから、数%の加算であっても支払いがより一層厳しくなることは否めません。

2017年12月時点で、国民年金第1号被保険者および任意加入被保険者が1ヶ月分として支払う保険料は16,490円ですから、その14.6%は2,704円であり、どれだけ支払いが重いものになるのか分かるというもの。
(参考:国民年金保険料 - 日本年金機構

所得税や住民税などと同じく、この債務は納税という国民の義務とされる支払いであることから、一般的な借金などの債務と異なり、破産したとしてもついて回るものになります。

そのため、支払うにあたっての優先度や重要度は高く、将来的に自分が年金の恩恵に預かれない可能性があるという不満を感じたとしても、やはり払っておくに越したことはないといえるでしょう。

将来の年金受給額に影響が出る

多くの人にとって、これは既知の話かもしれません。

年金保険料の未納が多ければ多いほど、将来的に支給される年金額は減っていくため、受給できる金額は減ってしまいます。

場合によっては、もらえなくなるかもしれません。

日本年金機構によれば、2017年8月時点で、20才から60才までの40年間における全期間分の保険料を納めた場合、老齢基礎年金は満額が支給され、その金額は年間779,300円になるとしています。
(参考:老齢基礎年金 老齢基礎年金

しかし、これはあくまで全額を納付できた場合の金額であり、そうでなければこの金額はもらえません。

また、保険料を納付した期間と免除された期間、合算対象期間とされる特定の期間の3つの期間を合計した期間が10年間以上なければ、支給されないことが発表されています。

そのため、現状でも老後にもらえない可能性が高いと思われている年金ですが、支払わなければ100%もらえなくなるのです。

自分の身に何かあったときの補償が受けられなくなる可能性も

年金というと、老後の生活資金としての社会保障制度の側面ばかりが注目されますが、年金が担っている役割は老後のための保障だけではありません。

  • 障害基礎年金
  • 遺族基礎年金

年金は、この2種類の社会保障も担っています。

これは老後にかかわらず、自分の身にいつ何が起こるともしれない世界で、誰にとってもお世話になる可能性のある保障であるため、これが受けられなくなるというのは、生活に大きな不安をもたらすことになるでしょう。

障害基礎年金

一般的に、障害者になるとそれまでと同じように働くのが厳しくなります。

また、仕事ができたとしても給料が低く抑えられる可能性も少なくありません。

しかし、誰にとっても、生活を送るためにはお金が必要です。

お金は必要だけれど、働くことができず、収入が確保できない。

あるいは、働けたとしても賃金が低すぎて生活に支障が出てしまう。

こういった事態に陥った人が、最低限度の生活を送れるようにするための保障が障害基礎年金です。
(参考:障害基礎年金 - 日本年金機構

これは、障害等級に応じて、780,100円以上の金額の支給が保障されるもので、たとえば障害等級が1級で子どもがいる場合は、年間およそ140万円を受け取れるといった具合に、その金額が上乗せされます。

しかし、この障害基礎年金は、国民年金を納付していない場合、受け取ることができません。

基準としては、何らかの事故や病気によって病院を受診した初診日にあたる月の前々月までに、公的年金加入期間の3分の2以上の期間納付していることが求められます。

あるいは、初診日にあたる月の前々月までにおける1年間において保険料の未納がないことが求められるのです。

いずれにせよ、未納が続いていればもらうことができません。

健常者として普通の生活を送っていると、障害を負ったときの状況というのは中々想像ができないかもしれませんが、昨今は過労などによっていつうつになるかも分からない世の中です。

この障害にはうつなど精神疾患を負った人も精神障害者として給付の対象になります。

うつなどの精神疾患を負った場合、休職する場合が多く、その期間中の収入はある程度保障されることも珍しくありませんが、それでも社会復帰までには離職をして長い療養期間を必要とすることも珍しくありません。

そういった状況下において生活を送る上で、この年金が受給できるかどうかでは生活の困難度が大きく変わることは想像に難くないでしょう。

けれど、未納期間の状況によっては、こういった保障を受けることができなくなるのです。

なお、障害年金を受ける場合、厚生労働省の定めにより様々な手続きが必要になるケースもあり、またそれとは別に障害者支援に関するサービスなどを受けられるようになる可能性もあるため、自治体などの福祉課や地域包括支援センターへの相談も行った方が良いでしょう。

遺族基礎年金

障害者になることは想像しにくいかもしれませんが、誰だって遺族になることは想像できるかもしれません。

国民年金に加入していた人が死亡した場合、配偶者など遺された遺族に対して遺族基礎年金が給付されます。

これは、たとえば世帯主である夫などが亡くなった場合に、遺族である妻と子どもの生活を支えるために支給されるもので、子どもが18才に到達した年度の末日まで、780,100円と子どもについての加算額が支給されるというものです。
(参考:遺族基礎年金

こちらも、死亡月の前々月までの1年間保険料を納付していることが条件となっていることから、未納であると万が一自身が死亡した際に、家族に対して辛い思いをさせるだけでなく、生活の不安までももたらすことになってしまいます。

逆に、自分の配偶者が亡くなった場合に、配偶者が年金を支払っていなければ、子どもに経済面で辛い思いをさせることになってしまうかもしれません。

障害基礎年金、遺族基礎年金の受給が厳しくなるというだけでも、年金保険料の未納によるデメリットは非常に大きく、差し押さえだけが未納による危機的状況をもたらすわけではないということが分かることでしょう。

年金の督促がきたとき差し押さえを回避する方法はあるのか

年金の督促がきたとき差し押さえを回避する方法はあるのか
では、国民年金保険料・厚生年金保険料など、年金保険料の滞納によって督促が来た場合、その後の差し押さえを回避する方法はあるのでしょうか?

年金事務所に相談するのが一番

身も蓋もない話になってしまいますが、もし年金が払えないという状況があるのであれば、そのときは日本年金機構や住んでいる自治体の国民年金窓口に相談しに行くしかありません。

日本人の多くが、このような納めるべきお金を納めないときや借金が返せないときなど、自分の内側に閉じ込めて、どうにかできないか一人で悩んでしまいがちです。

その結果、中には思い詰めて自殺までしてしまう人が少なくありません。

しかし、ここまでで知ったように、たとえば差し押さえに至るまで何度も督促や来所の促しが行われるように、突然厳しい処分が行われるわけではないのです。

相談してみれば、何らかの対処方法を示してもらえるということはありますし、そのためにもこのような来所勧奨などが行われます。

一人で思い詰めるようなことではありません。

これは借金にしても同じで、極端な話ですが、破産を申請することで債務から開放されることも可能です。

そして、破産したところで、人生が終わるわけではありません。

いくらか不便ができるだけで、破産したことが吹聴されることはありませんし、通常の生活において大きな支障が生じるというものでもありません。

年金債務に関しては免除されることはありませんが、払えないという状況であれば、相談しさえすれば、何かしらの猶予措置や対処法を教えてもらえることもあります。

そのため、督促などを受け取ったときにすべきなのは、自分でどうにかしようと考えたり、時間を稼ごうと安易に無視したりすることではなく、いち早く相談に行くことなのです。

年金の差し押さえは回避したいけど支払えない!そのときに取るべき方法

年金の差し押さえは回避したいけど支払えない!そのときに取るべき方法
財産の差し押さえは受けたくないけれど、年金保険料を支払うだけのお金もない。

そもそも収入自体が少なく、仮に年金保険料を支払えたとしても生活がままならなくなってしまう。

このような人も、昨今の社会状況を鑑みれば少なくないかもしれません。

では、実際問題として、そういったときにどのような対処をすれば良いのでしょうか?

ここからは、年金保険料を払うことが厳しいときに取れる対処法を説明します。

年金には猶予制度と免除制度がある

年金には、支払うことが厳しい人が利用できる、免除・猶予制度が存在していることはご存じでしょうか。

これは、本人や世帯主、配偶者の前年の年間所得を元に判定されるもので、主に以下の4種類に分類され、それに応じた軽減措置を受けることが可能になります。

  • 全額免除
  • 3/4免除
  • 半額免除
  • 1/4免除

つまり、所得の低い人は、そもそも国民年金保険料の重い負担を受けずに済むという制度ですが、案外この制度を知らずに免除申請ができていない人が多いといえます。

だからこそ、早めに日本年金機構や市役所などの窓口に相談する必要があるといえるわけです。

また、そのときの所持金で支払うことができないという場合であれば、一括納付ではなく分割納付をするという手もあります。

これについてもやはり担当窓口に相談することで対応してもらえるため、相談の重要性が分かるというものでしょう。

家族の所得が高くても受けられる制度もある

猶予・免除制度は、家族の所得状況も確認されることから、自分の所得が少なくても家族の所得が高いために、猶予や免除を受けられないという可能性もあります。

その場合に利用できる制度が「若年者納付猶予制度」。

これは、20才~49才の収入が少ない人を対象として、納付が猶予されるという制度です。

免除と異なり、あくまで猶予されるだけなので、支払わない場合、将来的な年金額の減額要因になってしまいますが、受給資格期間への参入や障害基礎年金などの受給資格期間への参入が可能なので、未納状態のままにしておくよりは良いといえるでしょう。

10年以内であれば追納することができ、それによって将来的に受け取ることのできる年金額を増やすことができるため、現時点では余裕がないけれども、将来的に支払う余裕が出るという人にとっては、最適な方法に違いありません。

学生が受けられる猶予措置もある

猶予措置には、学生が受けることのできるものもあります。

これは、前年所得が118万円以下の学生が利用できるもので、10年間の猶予期間を受けることが可能です。

審査基準として家族の所得を参考にしないことから、利用もしやすく、一般的な猶予同様10年以内であれば追納することができるため、学生の間収入がない人にとっては非常にありがたい措置といえるでしょう。

学生の場合、アルバイトなどをしても社会保険への加入が行われないことがほとんどであるため、その意味でも非常に助かる制度といえます。

差し押さえを受けないためにも年金のことを知って計画的な支払いを!

差し押さえを受けないためにも年金のことを知って計画的な支払いを!
将来的な不安も多く、支払うメリットが感じられないこともあり、納付に対してネガティブなイメージを持ちやすい年金ですが、支払わなければ差し押さえ処分の対象になる可能性もあります。

また、決して安い金額ではないため、所得の低い人にとっては非常に重い支出になってしまい、やはり滞納してしまいがちですが、それでも払わなければ差し押さえ処分が待っています。

そういった最悪の事態にならないために、猶予や免除制度といった制度についてしっかり知っておき、自分の状態に合わせ、計画的な年金の支払いをしていくのが好ましいといえるでしょう。

ここまでの内容をぜひ今一度再確認し、自分にとって最も良い方法で、年金の納付に対応してください。